1962年生

箸置き

 日本の箸文化を紐解くと、聖徳太子から遣隋使にまで遡り、箸置きも同時代の神前儀式に用いられた耳土器(みみかわらけ)が始まりといわれています。ただ、発展の歴史は大いに異なり、箸文化は衛生面からもその時代から庶民にまで広まったものの、箸置きは江戸後期から明治に入ってようやく広まりはじめた文化のようです。どちらにしろ、箸のみで食する日本特有の食習慣が、今日の箸置きの百花繚乱を生む素性にあったのは紛れもない事実のようです。
 古き時代に作例がなく、またこの時代にはなかなか折敷に合う小粋な箸置きにも出会えないと嘆くお客様から「箸置きを作ってくれる作家さんはおられませんか?」とのお声がけ。ここは苦労に苦労を重ねて秋刀魚長方皿の企画を見事に昇華させた眞清水さんしかいないと白羽の矢で頼むことしきり。何とか口説き落としての今回の企画となった次第です。
 さて、と制作に取り組み始めたまではよかったものの、いざあの小宇宙に様々な釉薬をかけての試作の段階で、数々の難問が噴出したようです。長方皿とは全く違う、ちいさきやきものに宿る美の世界観。1年以上に及ぶ孤軍奮闘から十種類以上の箸置きを生んでくれている様子。さらに、家人からの西洋料理を中心に用いられるカトラリーレストの依頼にも真摯に答えを出してくれたようです。
 五代・眞清水藏六というものづくり、高校時代はラクビー部のキャプテンまで務め上げた好漢。何事にでも真正面から取り組むその姿勢は、ものづくりの資質としては何ものにも代えがたく、還暦目前にしてその努力は山溜穿石の如くに感じます。
 令和4年がどんな年になるのかわかりませんが、新春を飾るに相応しい茶道具の逸品も同時にならぶ、華やかな企画から幕を開けます。
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