1949年生
越前酒器
 あれから3年の月日が流れた。個展に向け最後の追い込みに入ったあの日から。突然襲った体調の変化、追い打ちをかけるように窯の調子も悪くなり、個展の話は無期延期となった。手術、リハビリ、食事療法に東洋医学。ありとあらゆる手を尽くし復活を遂げた。そして、その間に窯の大改修を断行し、窯自身も息を吹き返した。ようやく待ちに待った個展が、2014年壺屋第一弾の新春を飾る。
 前にも触れたが、さらにこの3年の間に急須や土瓶を使う人は確実に減っている。急須でお茶を飲む習慣が、土瓶を挟んでちゃぶ台でする家族の会話が、昭和の遺産として語られる平成の世。それでも人生を賭して、急須や土瓶一筋に歩んできた作り手の魂の炎は、消えることなくここに毅然と存在している。それを証明してみせるための3年の歳月と考えたとき、彼を更なる高みに導いたことは、今回掲載の酒器にも見て取れる。
 今まで、頑なまでに急須土瓶を中心とした作品から大きく踏み出そうとしなかった村島順という作り手。大きな病を経験し、昭和という時代が忘れ去られようとしていることここに至って、自身の技術と経験を生かし、平成の時代に新しい価値観で使ってもらえるうつわとして昇華させたのである。窯の復活を祝うかのような見事なグラデーションを見せる窯変。急須で実証済みの口切れの良さ。藤蔓で編んだ取っ手は、もちろん順さんの手わざである。徳利あるいは片口という酒を注ぐうつわの世界に挑戦状を叩きつけるが如くの今回の酒器。時代を超えて使い続けられるものの価値を、心底解している作り手の創作の幅が、まだまだ拡がる可能性を大いに予感させる。
 この3年の寄り道が決して遠回りはなかったことを、そして今後の更なる飛躍を実証してみせる個展が目の前に迫ってきた。平成の時代の新たなちゃぶ台伝説がここにはじまる。
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