雅楽香コレクション


 『季器洒彩』のページで取り上げてから2年の歳月が流れました。今年(2004年)12月、大切に育んできた企画がようやく日の目を見ることになります。
 ものを大切にするという思いからひろがったといわれる仕覆。日本という国 が世界に誇れる文化のひとつであると思います。元来の日本人の美意識の中には、「育む」という独特の観点が存在します。西洋の文化の中にはあまり存在し得ない美意識であるように感じてきました。「育む」という考えは「大切にする」という思いにも通じる概念であると思います。そんな元来の日本人がもつ、大切に育んでいる器物を裂地に包んで次代に継いでいくという思い、それをもっと拡げていきたいと考えていました。
 そんな時、彼女と出会いました。陶芸家の家に生まれ、夫・上田光春氏の茶入の仕覆を長年作り続けている彼女のそれは、いつか彼女の制作した仕覆を中心に展覧会を企画してみたいと思わせる技量とセンスを持っていました。
 かれこれ温めること5年。昨年後半からようやくこの企画が本格的に動き始めました。8人の陶芸家(市野信水・各務周海・金重巌・北村圭泉・西岡良弘・松林廣・吉野桃李そして上田光春)各氏に声を掛けたところ、どの方も二つ返事で了承してくださいました。さらに集まってきている作品は逸品揃い。茶入はもちろんのこと、茶碗に徳利・ぐい呑まですべてが、雅楽香コレクションから選びに選んだ裂地に包まれて展示される様は想像しただけでも壮観と言えるものになるでしょう。
 元来の日本人が大切にしてきた「育む」というこころが、道を踏み外し始めている私たち現代日本人のこころに少しでも根付けば・・・。そんな思いの展覧会。みんなで楽しみましょう。
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