楽しみな個展が間もなく始まる。川北さんとは年齢がひとつ違いということもあり話しやすく、お付き合いを始めてからかれこれこの5年間に、オリジナルの麦酒椀をはじめ多くの注文に快く応じていただいてきた。彼の実直なもの作りとしての性格は、見事に作品に反映されていて、その気品高く格調高い仕上がりに加え、そこはかとなく醸し出す温かい雰囲気と使い勝手の良さに、当店でもファンの方々が増えている。
小松市の十二ヶ滝の風景に溶け込んだ左側の作品は、神代木(じんだいぼく)といわれる1千年以上前の埋もれ木、それも相当の大木であったことを彷彿とさせる美しい木目の欅材を、長い年月を掛けて乾燥させ歪を嫌う水指に仕上げた逸品で、リズム感のある銀線象嵌の美しさと相まって、非常に上品な仕上がりとなっている。また右側の盌は、桜材に沃懸地(いかけじ)という蒔絵の地蒔技法で、銀の鑢粉(やすりふん)を蒔き詰め、正面を絵唐津の鉄絵を連想させる動きのある搔き落としをすることにより素地の桜材の景色を生かし、盌全体に茶に適うリズムを巧みに生み出している。
今回は店主のリクエストもあり、棗などを含め茶席で活躍する作品が中心の展覧となるが、虫喰いの景色を生かしたお盆や酒器などの食に纏わるうつわも展示予定である。また、父であり人間国宝の川北良造氏の作品も賛助出品していただく。
川北浩彦というものづくり、時には大型バイクを操りツーリングに興ずるという活動的な一面を持ち合わせたシニア世代入口の彼が、天命を知り、脂の乗り切った作り手としてどのような形で作品を仕上げてくるのか、壺屋での初個展が実に待ち遠しい。 |