1957年生
柿の蔕茶碗
 4年振り4回目となる個展の開催(2017年4月)がようやく決まった。ここ数年、幾度となく同じフレーズを携えて丹波路を走った。ある日は石屋川の染井吉野を愛でながら、またある時は六甲の蝉の大合掌を背に、三田フラワータウンの銀杏並木が金色に輝く日もあった。そして昨年末、片口展の報告も兼ねて伺った小雪まじりの立杭の地でその茶碗が産声をあげていた。
 今回掲載した柿の蔕茶碗である。「ようやくこんなんができたわぁ。」いつものハニカミ混りの笑顔で出されたひと碗。二代信水という宿命を背負って、日々格闘してきたひとつの答えを感じずにはおれないひと碗。柿の蔕といえば、「青柿」(五島美術館)「京極」(徳川美術館)「白雨」(松永記念館)「大津」(藤田美術館)そして「毘沙門堂」(畠山美術館)などなど名碗が数多く存在する。どの名碗ともどこか違う、そこにはまぎれもない丹波の土から生み出された高麗の雰囲気が匂いたつ茶碗、まさにこれが待ちに待った二代信水の新境地である。
 「丹波立杭の陶土をもう一度いちから見直し、さらに南蛮風の焼きの可能性も試してみようと思うんやけど・・・」。そこからは、堰を切ったようにトントン拍子で話が進んだ。さて、その結果をどんな展覧に仕立ててくるのか。柿の蔕を皮切りに、南蛮縄簾・・・ハンネラ・・・、と店主の想いは膨らむ一方である。
 4年前の個展終わりに、「次は二代信水としての新境地でお願いします。」と約束を取り付けてからの歳月。気が付くと彼も今年11月には還暦を迎えるという。まさに初心に帰った第一歩を共に歩める今展、期待に胸が膨らむ。
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