「小雪」淑女の名ではありません。今展では「しょうせつ」と読む二十四節季の二十番目にあたる11月後半をイメージしています。時期的には小春日和という言葉であらわす季節でもあり、日本の秋を楽しむ一番いい季節でもありました。ありましたと過去形で語らなければならないような昨今の気象状況を憂うのではなく、それはそれで楽しみたいものです。
秋を楽しむうえで、欠かせないのが秋の七草。昔は「ハギキキョウ クズフジバカマ オミナエシ オバナナデシコ」と五七調のリズムで覚えたものですが、このごろは頭文字の語呂合わせで「お好きな服は」とか「ハスキーなお袋」と覚えるそうです。春の七草は七草粥にして食して楽しむのに対し、秋の七草はどの花も華麗で清く美しく、古き時代から茶花としての歴史もあり、日本人のこころの襞に深く入り込んでいるようです。
約1年振りとなる今回の頒布会。まさに秋を楽しむべく生まれてきたような小壺での頒布会となります。古信楽焼に代表される「蹲(うずくまる)」。人が膝を抱えてうずくまる姿から来ていると伝えられていますが、もとは穀物の種壺や油壺として使われていた雑器を茶人が花入れに見立てたものであるようです。そんな蹲壺とはまた趣が違う金重巖の今展の小壺。彼が長年旨としてきた、土に生き、土に生かされる生活から生まれた魂の塊に他ならないと感じさせてくれます。今展に向けて作品の制作雑感を聞いてみると「心地よかった」のひと言だけが返ってきました。
緋襷と緑釉の小壺に、お嬢さん(金重久子)の新たな取り組みである天然素材で染め抜いた裂地張のランプシェードが彩りを添えてくれます。
『深秋簾幕千家雨』(杜牧) |