1965年生


伊部十九利

 久しぶりの深瀬だった。40歳代の区切りの頒布会を終え、さあ次の十年に向けてと準備を整え、歩もうとしていた矢先に観たある展覧会がきっかけとなったようである。深く深く自分を見つめ、向き合い、己が作陶の意義を自問自答する日々。私の記憶では、近年最長の深みであったと記憶する。
 5月某日。今日はやきものの話をしないと決め、ぶらりと訪問。前夜の雨滴に光る庭の芽吹きを愛でながら、半日近く世間話に興じる。日本人の生き方を憂い、美しい日本国を憂い、この地球で生かされている意義を問い、生きとし生けるものすべてが意義ある生き方を全う出来ていない世を憂いていた。
 8月某日。突然の連絡に、取るものもとりあえず伊部に急行。いつもの座敷に、背筋が寒くなるような小向付がずらり。今までとはまた雰囲気の違う鉄絵に、彼独特の造形が進化を見せ、桃源郷に迷い込んだ印象を受けた。彼に率直な感想を言うと、その表現は嬉しい!まさにそのような美しい日本の原風景に触れたのが、今回の作品のきっかけだった気がするとの弁。
 次の十年の扉を開ける頒布会。とっておきの伊部酒器と共に、是非新たな巖ワールドをご覧ください。「山高月上遅」
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