各務周海 回顧展

『百尺竿頭須進歩』


 あれから、1年が過ぎた。

 2010年4月27日〜5月9日、新緑の美しい京都・東山の野村美術館で回顧展が開かれた。縁あって、お手伝いをさせていただいた。
 回顧展としては、13日間の会期と短いものではあったが、連日詰めかけた大勢の周海ファンの皆様のお顔を拝見していると、陶芸家・各務周海氏の人柄に改めて触れたような気がした。
 遠路はるばる三々五々お見えになった方々が遺作に対峙する真剣なまなざし。終日詰めていた子息・賢周氏に語りかけるその内容は、亡き周海氏を心から偲ぶものであり、子息に対する心からの励ましでもあった。熱く何時間も語り続けられる方、無言で会釈して立ち去られる方、抱擁して子息と悲しみを共有される方、がっちり無言で握手される方。様々な表現の仕方で、周海氏に対する畏敬の念と感謝の気持ちがどの方からも溢れていたように私には映った。
 人は亡くなられてからその人の足跡そしてその真価が、赤裸々に白日の下に曝される。各務周海氏が歩んだ道は、人を大切にし、縁を紡ぎ、そして生み出す作品に魂を込められていたのだと改めて感じた。一般にいい作品といわれるものを紡ぎだす人は、過去も含め多くおられたと思う。ただ、作品を介して人を惹きつけ、作り手のこころに触れた人をさらに虜にし、亡くなられてからもなお多くの人に大切に思われるものづくりはそうそういない。改めて各務周海氏と縁を深められたことに感謝するとともに、人のこころの温かさ大切さをかみしめている。
 そして、『百尺竿頭須進歩』(百尺竿頭すべからく歩みを進む)、周海氏が大切にされていた言葉を改めてこころの中で呟いている。


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