何から書き始めればよいのか、未だに整理がついていない。
亡くなる2週間前。いつものように家人と永田にある窯場を訪れた。あの、なんとも人懐っこい笑顔でその日も迎えて下さった。黄瀬戸・志野・織部はもちろんのこと、いつもの事ながら話題は政治経済から四方山話にまでおよぶ。話題が尽きない中、築窯中の窯の話になると、いてもたっても居れないとばかりに「時間あるか?今から岩村へ行こう!」とそそくさと身支度を始められた。これもいつもの周海さんだ。
今から考えるとあまり車を運転したくなかったのだろうか。「お、乗せてくれよ。」と、初めて我が家の車に乗り込み永田から岩村へ。道中、本当に周海さんらしく車窓からの風景をつぶさに説明して下さった、木々の一本にいたるまで。
国道から少し入った造成中の一番奥の敷地にその窯は造られていた。片焚きの倒炎式の窯で、あとは両サイドの壁を残す状態まで出来上がっていた。「この窯で、とびっきりエエもの焼くんや。」と、言われた時のあの笑顔が忘れられない。