1955年生
丹波井戸茶碗
(高さ9.2×径16.2×高台径6.5)
「花が咲く如く」。四回転半の轆轤の世界である「井戸」の話をすると、彼がよく持ち出す言葉である。高台を花の萼(がく)に、胴を花弁に見立てた審美眼には、唸らされるものがある。
野山を駆けめぐり土や長石を探し歩く生活を続けている彼が、ふと出会った野の花の美しさに魅せられ茶碗に写す姿を想像したとき、彼の本質が見えるような気がする。
そんな彼が、井戸茶碗の高台脇の締まりで最近気づいたことがあるという。大地にしっかりと根ざし、可憐に咲く花の萼には、その花の美しさには似合わないほどの力強さと締まりがあるという。
信楽茶陶界の雄、上田光春との2人展に向けて送り込んできた作品が、掲載の「井戸茶碗」である。轆轤目・釉調・梅花皮の雰囲気ともに申し分がない。それ以上に全体の姿を見たとき、美の本質に迫ろうとする彼の迫力を感じる。そしてそこには、名も無き野の花を写しただけの彼の姿が映っている訳ではない。つまり、今回を第一回の2人展と位置づけた背景にあるもの。今後、二回・三回と続くであろう2人展で大きな花を咲かせた姿が映っている。
もちろん、2人展は壺屋の夢のひとつに他ならない。
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