1950年生
「蒔絵雪吹」
(高さ120×径118)
 最近の彼の活躍には目を見張るのものがある。特に現代工芸の分野では、今年(2002年)も自身の集大成とも言うべき展覧会(宮原省二「漆黒の世界」展)を八十二文化財団のギャラリーで開催し大反響を得た。
 そんな彼に、今回の二人展では「茶の寸法」をお願いしている。棗・茶器に始まり、菓子器・膳・盆から、椀・片口に至るまで。向き合っていただいている。壺屋の求めるものは、現代工芸の世界で自由奔放に作品を生み出す宮原省二という人物にとっては、苦悩であり苦痛であるかもわからない。また、年齢から来る漆の繊細な作業への限界も感じ始める時期かもしれない。
 しかし、今回の二人展の最終打ち合わせでの小宴の折、松林氏が奇しくも言っていた「省ちゃんが生み出す作品は、伝統工芸だの現代工芸だのという枠で捉える作品ではなく、高度な漆の技術に支えられたひとつの世界として捉えられるべきものだ。」との一言が彼の作品の本質である。
 伝統的な「茶の世界」には多くの制約が存在する。だからこそ自由な発想で常に作品を生み出してきた感性が生きる。今回掲載の「蒔絵雪吹」も、蛍の乱舞という従来の棗の蒔絵には見られない自由な発想と着眼、金銀を黒乾漆粉で石目風に仕上げた確かな技術、そしてなにより品格の高さが漂っている。
 松林廣にも共通する本質を捉える目、いよいよ晩秋に二人の作品が激突する。
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