1968年生
 2021年6月角居康宏展「修羅」と題し、彼のアートな側面を中心にご覧いただく展覧会を開催しました。思わぬ緊急事態宣言延長の影響を真面に受け、美術館でしかご覧いただけない彼の代表作や大作を展示したにもかかわらず、多くの方にご覧いただく機会に恵まれませんでした。
 そこで延長企画として、2021年7月は「シュラシュシュシュ」と題し、さらに1ヶ月間彼のアート作品の代表作とともに、ポップな新作を揃えて皆様に楽しんでいただこうと思っています。ご存じのように「しゅらしゅしゅしゅ」という言葉は、香川県の民謡の「金毘羅船々」の歌詞として有名です。その語源を辿れば「修羅」は巨石を運ぶ運搬具の意味からきたようで、金毘羅さんが吹かせた風に乗って修羅が景気よくスイスイ行く様を洒落て歌詞にしたそうです。
 「修羅」展搬入時に、緊急事態宣言延長必至の報道を受け、角居展1ヶ月延長の腹積もりを固めたうえで、彼にボールを投げてみました。延長することには即決での賛成を取り付けたものの、さて延長企画をどうするかという話になると、彼が頭を抱え始めました。
 彼、角居康宏という作り手は、私には「言霊」をとても大切にするものづくりに見えます。今回の「修羅」という企画も彼が絞り出した言葉であり、DMのタイトル字であり、考え方でした。悩みながら帰途につこうとする彼に『延長企画はシュラシュシュシュなんてどう?』と投げてみました。たぶん彼にはオフザケと映ったに違いありません。が、数日たって彼から返事がきました『それでいきましょう!』と。
 語源を調べ、店主の意図を考え、今の世の中の閉塞感を憂い、はたと気づいてくれたようです。おふざけでも言葉遊びでもなんでもなく、「修羅」の出口は「シュラシュシュシュ」と軽快に、そして修羅のごとくに世を渡っていくことが、これからのものづくりには必要だと。
 言霊の扉を開くと、角居康宏というアーティストはモーレツに走り出します。寝る間も惜しんでものづくりに没頭します。ポップでアートな文具や雑貨、はたまたポップな表札まで制作してくると聞いています。ただの延長企画ではない、また新たな彼の一面をご覧いただける企画展になりそうです。楽しい夏がもうそこまでシュシュシュです。
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